お役立ちコラム

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生前対策、生前贈与

公開日:2019/04/20 更新日:2021/03/22

【相続の生前対策】相続人確認と財産の把握を始めよう

相続の生前対策は、終活の中でも重要なことのひとつです。大切な財産をどう分割するか、将来子孫が仲良く暮らすためにできることは何かを考えて一歩を踏み出すことで、実際の相続や相続税が大きく違ってきます。具体的にできることの中でも基礎的なこと、相続人の確認と、財産の把握を始めてみましょう。

相続人の確認をしてみよう

いきなり大変な作業に手をつけると、ギブアップしてしまうことも少なくありません。まずは親族をチェックして、相続人の確認作業から始めてみましょう。

相続人とは

相続人とは、財産を相続する人を指します。それに対して、財産を遺す人のことを、被相続人と呼んでいます。

相続人は、遺言書で指定される場合と、民法で定められた人が自動的になる場合があります。民法で定められた相続人のことを、法定相続人といいます。

法定相続人は被相続人と遺族の関係によって異なってきます。また人数もその家庭によって大きく異なります。
 

法定相続人の決まり方

民法で定められた相続人には、まず配偶者が挙げられます。配偶者以外の相続人は、血縁上の近親者から順に決められています。
 第一順位
直系の子ども・養子縁組をした子ども・認知した非嫡出子と、その直系の孫(直系卑属)

第二順位
直系の両親と、直系の祖父母(直系尊属)

第三順位
兄弟姉妹と、その子ども(甥や姪)

 
まずは第一順位にあたる人が相続人となります。もしも第一順位に当たる人が1人もいない場合は、第二順位の人々が相続人になります。
さらに第二順位に当たる親族も誰一人いない場合は、第三順位の人々になります。
 
法定相続人は、【配偶者】+【第一順位~第三順位のうち順位が高い立場の親族全員】となります。

法定相続人には財産分割の指標がある

法定相続人は、財産分割の割合が民法によって定められています。遺言書で被相続人が分割の割合を指示していない場合、以下の指標が定められています。
 
相続の分割方法

相続人 財産分割の割合
配偶者のみ1/1
配偶者+第1順位配偶者1/21/2÷第1順位人数
配偶者+第2順位配偶者2/31/3÷第2順位人数
配偶者+第3順位配偶者3/41/4÷第3順位人数

 
こちらは一応の指標であり、この通りに分割しなければならないわけではありません。そのため、不満がある相続人が出れば遺産分割協議という会議が開かれ、みんなが納得する分割方法を模索していくことになります。
遺産分割協議は紛糾することも少なくありません。特に現金化できるものが少なく、分けにくく売りにくい不動産が財産のほとんどを占めるような場合は、もめることが多いのです。
 
そのため、被相続人が元気なうちに財産相続の整理をして、財産分割の話し合いで親族同士がもめないように準備しておくことがおすすめなのです。
 

自分自身の財産を整理してみよう

自身の財産を分割する算段をする前に、今どれくらいの財産を保有しており、それがどれくらいの評価額になるのかを調べて、財産の棚卸をしてみましょう。

預貯金および現金

預貯金および現金は、もっとも価値が分かりやすく、分割もしやすい財産といえます。厳密には、被相続人名義の預貯金と現金(お財布のお金やタンス預金など)の扱いは異なります。
 

【預貯金】

相続となった場合、相続が発生した日(被相続人・財産の持ち主)が亡くなったその日の預貯金額が、相続財産となります。
相続人(配偶者や子孫など、財産を受け継ぐ人)が、被相続人が亡くなった後に預貯金の通帳を記帳し、亡くなった日の預貯金額が相続の対象となります。
被相続人が急に倒れて手術を行い、そのまま入院して月をまたいで亡くなった場合など、病院の支払いは月末締めなので、遺族が一度多額の預貯金を引き出している場合があります。
その場合、被相続人のために使用したものであれば、問題にはなりません。その場合、遺族は被相続人のために使った金額の領収書を必ず保管しておく必要があります。
 
また引き出した現金をすべて使わなかった場合、残りのお金は「手許現金」として保管し、申告することになります。
 

【預貯金の整理の仕方】

預貯金は、通帳をすべて出してチェックしてみます。ここ10年以上お金を入れっぱなしのまま、凍結させている通帳はありませんか。
現在も使用中という預貯金の通帳が何通もある、という方は、内容を確認し、定期預金になっているもの、定額預金になっているものは利率を再度調べます。
利率がある程度は高いものと、低金利でほぼ利益を生んでいないものがあるでしょう。その場合、比較的利率が高い通帳はそのままにしておきます。
低金利の預貯金はいったんすべて解約し、高金利の通帳にまとめて定額預金として預けることで、高額預貯金の通帳が一本化されます。
 
生活費はほとんど年金でまかなえるという場合は、年金が入金される通帳と、水道光熱費などの固定費が引き落とされる通帳を一本化します。そうすることで、普段の生活に使用する通帳も一本化できます。
 
高額預貯金に関して、もし投資に回したいという場合は、利用中の証券会社や信託銀行などのコンサルタントに相談してみましょう。
リスクヘッジのために分散化を勧められると思いますが、分散化するにしても管理会社を一本化することで、運用や亡くなった後の整理も楽になります。
 
一本化は無理でも、できるだけ通帳の数は少なくしておきましょう。何通も存在すると、それだけ手続きが煩雑になります。
特に何十年も昔に作った通帳で、現在は銀行自体合併されて名前が変わっているような場合は、新たに通帳を作り直したり、他の銀行に一本化したりするなどしましょう。
 
また預貯金の通帳と印鑑、投資信託の書類といったものは収納場所をエンディングノートや遺言書に明記しておくと、遺族が相続資産所在が分からず困るという状況を防げます。
 

【現金】

現金は基本的に自己申告とならざるを得ません。あまり高額のお金を家に置いておくことは危険ですし、遺産を整理する際、金額の証拠となるものがないのでトラブルの原因となります。
手許には普段使う金額を残す程度にし、できるだけ銀行などに預けることをお勧めします。「預貯金は好まないので自宅で現金を保管している」旨を外部の人に漏らすことは、絶対に避けましょう。
 

【現金の整理の仕方】

大きな現金がある場合は、普段お世話になっている銀行などに定額預金をしたり、資産運用に回すなどして外部で保管しましょう。
預貯金は増えないしあてにならないと考える方も多いかもしれません。でも自宅に大金を置いておくことで、窃盗犯に狙われたり、目を付けられる危険もあります。
最近は特殊詐欺の手口も巧妙になってきています。自宅に多額のお金が保管されていると、特殊詐欺の危険度も高まります。
 
特殊詐欺を防ぐためにも、相続人にあたる子ども達とは頻繁に連絡を取り合い、特殊詐欺に遭わないよう、怪しい電話がかかってきたときにきっぱり「違う」と言える環境をつくっておくことも大切です。
 

不動産(土地)

不動産は土地と建物が主な財産になります。ここではまず、土地について説明をしていきます。
 
土地の広さがはっきり分かっている場合は、【路線価】という価格指標を当てはめて、だいたいどれくらいの価値なのかを計算することができます。
路線価とは毎年7月に発表される、だいたいの土地の評価額です。国税庁のホームページで公表されています。
【国税庁】路線価図
 
路線価図にない土地の価格は、同じサイトの【市区町村の評価倍率表】で調べることができます。
 
自身の持っている土地の広さが分からない、という場合はお住まいの地域、もしくは所有している土地のある地域を管轄している法務局で、土地の登記をチェックして広さを調べてみましょう。
 

【土地の整理の仕方】

土地を分割、もしくはそのまま親族に相続して欲しい場合は、生前からの贈与という方法もあります。
また相続人として今後土地の管理をお願いしたい親族がいる場合は、本人やその他の親族ともよく相談したうえ、了承を得られれば遺言書に明記するという方法もあります。
 
土地を土地のままで相続することにあまりこだわりがなく、相続人が土地分割だと非常にもめそうだという場合は、売却して現金化してしまうという方法が最も簡単ですね。
いずれにしても、土地は現所有者名で登記されていなければ売買ができません。またそのまま相続するにしても、登記名が古いと、さかのぼって登記をし直す手間がかかります。
 
分割したり売却したりする予定がなくても、一度は法務局を訪れて、自分が所有する土地の登記はどうなっているか、価値はどれくらいになるのかを調べておきたいものです。

不動産(建物)

不動産のうち、今度は建物について詳しくご紹介します。建物の場合、相続に関してはさまざまな特例や控除などがあります。それらを知っておくだけでも相続は大きく変化します。
 
建物の評価額は、土地よりも簡単に把握できます。毎年各市区町村から送られてくる固定資産税の納付書に、明細票がついてきます。
固定資産税納付書の明細票に固定資産の評価額が記されているので、今所有している建物の評価額がすぐに分かるようになっています。
 

【建物の整理の仕方】

建物は、①今住んでいる家と、②所有しているだけで空き家になっている建物、③借家として誰かに貸し出している建物に分けられます。
 
今住んでいる家に継続して配偶者が住む場合や、現在同居している親族が住み続ける場合などは、小規模宅地等の特例という大きな節税特例を受けることが可能です。
そのため、自分の身に万一のことが合った場合、配偶者や同居している親族がこのまま住み続けるのか、それとも売却するのかを相談しておくと良いでしょう。
 
借家として誰かに貸している家の場合、すぐに処分するという訳にはいきません。そのまま貸し続けるのか、それとも住民が出ていく意思があるのか、大家として確認しておくと良いですね。
 
空き家になっている家がある、という方も多いと思います。それは、これまでの法律では、家が建っている土地は税金が非常に安くなったためです。
 
しかしそれが仇となり、現在廃墟化してしまう放置空き家が増えて社会問題化しています。そのため、空き家に関する法律が変わり、特定空き家として認定されると減税措置が受けられないことになりました。
空き家はすぐに傷んでしまいますし、ゴミの違法投棄の巣窟となったり、植物が生い茂って家が腐り、景観を損ねたり、道路や近隣の家に被害が及ぶ事もあります。
 
今後、こういった荒れた空き家は節税対策にはならないため、土地を含めて所有することにこだわりがないのであれば、空き家を撤去して土地を売却し、現金化するという方法もあります。
親族に面倒な空き家の相続や管理を継がせずに済みますし、空き家のある土地の押し付け合いというトラブルも防ぐことができます。

動産

動産とは、不動産とは異なる、より流動性の高い財産のことです。車や家財道具などが一般的です。
趣味によっては骨董品や美術品、貴金属や宝石などがあるという方もいますね。そういったものも財産として認められます。
 

【動産の整理の仕方】

車は、自身が高齢になって乗らなくなった場合、名義を変更することが可能です。また家財道具については、小規模宅地等の特例として家族が住み続ける場合、同時に受け継ぐことが多いでしょう。
美術品や骨董品などは、価値が分からない、趣味を同じくしない親族にとっては困りものと言えます。同じ趣味をもつ友人や商店などに、売却や譲渡などの算段をお願いしておくという手もあります。
 
宝石や貴金属に関しては、使わなくなったものであればリサイクルするという方法もあります。価値によっても異なるので、税理士に相談してみましょう。

有価証券等

有価証券等には、株式や投資、著作権・特許などさまざまなものがあります。今後も利益を生み続けるものであれば、どうすればよいのか税理士に相談し、行く先を決めましょう。

マイナスの財産

財産には、マイナス分も存在します。借金や未払いの税金、医療費、保証債務など、さまざまな形をしています。
生前に財産を計算する際、未払いになっている請求書などがあれば、できるだけ支払いを済ませます。
マイナスの財産も、価値のある財産同様相続され、親族に多大なる迷惑をかけることになってしまうからです。
 
債務が多い場合は、プラスの財産で支払えるだけ支払う「限定承認」という手段もありますが、相続人にとってはあまりメリットがありません。
マイナス財産が多すぎる場合は、相続人からそっぽを向かれてしまい、財産放棄される可能性もあります。
できるだけ元気なうちにマイナスの財産は整理を終え、「立つ鳥跡を濁さず」の精神できれいに完済しておきたいですね。
 
またマイナスの財産を受け継がなければならない親族には、すぐに現金化できる財産を残したり、所有する不動産のうち、すぐに売れそうな条件のところを整備しておくなどの考慮があると良いでしょう。

相続人確認と財産の把握・整理で終活をスムーズに!

今日からでもできる終活のひとつが、相続人の確認です。自分の配偶者と子ども、親・兄弟の順で相続権が移行します。
高齢で親が他界している場合や、子どもがいない場合など、ある程度、自分の財産を受け継ぐ人間がどれくらいの数になるのかはけっこう簡単に把握できます。
兄弟姉妹となると、甥や姪が引き継ぐ人もいたりするので、かなり人数が多くかなり煩雑になるかもしれませんが、家系図を作ってみると楽しく整理できます。
 
また財産も一度すべてに目を通し、処分できるもの、完済できるもの等、まとめられるものはまとめておきましょう。相続は、亡くなってから10か月のうちに話をまとめて税金を支払わなければなりません。
その間に四十九日や納骨、初盆などさまざまな法事もある家も少なくないでしょうから、もし財産が整理されていないと、相続人達の苦労は並大抵のものではありません。
 
自分の財産で親族がもめて仲違いなどを起こすことのないよう、できるだけ生前から身辺をきれいに整理しておきたいものですね。

本記事の執筆者

税理士紹介エージェント 編集部

2012年から10年以上、税理士紹介エージェント を運営し、最適な税理士をご紹介する中で お客様からよく寄せられる疑問や税務に関するコツ、最新の税制改正情報など、幅広く税に関するお役立ち情報を提供しています。

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