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生前対策、生前贈与

公開日:2019/04/19 更新日:2021/03/22

生前対策はまず身辺整理と財産の整理!遺言書も考えよう

最近、終活という言葉が注目されています。またエンディングノートというものを、書店や文房具店などで見たことはありませんか。生前から相続に関する手続きを進めることは、心から第二の人生を楽しむために有意義なことです。大切な家族が、仲良く幸せに暮らす未来のために、今からできる「もめないための相続」の生前対策について考え始めてみませんか。

もめないための相続の生前対策とは

相続の生前対策とは、生前から、自分の死後に発生する相続のために、できることを模索し準備を始めておくことです。

生前対策が注目されているのは相続税改正が大きな理由

生前対策が注目されるようになったのは終活ブームが訪れたことと、相続税の改正が大きな理由のひとつと言われています。
平成27年に相続税法が大きく変わり、それまでは相続財産の評価額が1億円を超える額でなければ課されることがなかった相続税の控除額ボーダーラインが、大きく引き下げられました。

相続税の控除額は、相続人の人数によって異なります。現在の相続税の基本的な控除額の計算方法をご紹介します。
 相続税の控除額の計算方法
3000万円+(600万円×相続人の人数)

 
相続人が1人しかいないという場合、控除額は3600万円になります。相続人が全くいなければ3000万円です。現状では、この金額が控除額の最低ラインとなっています。
相続人が多くなればなるほど控除額はアップしますが、それでも大きな増税となってしまいました。

平成27年の法改正までは、相続で相続税が発生するケースは全体の4%前後と言われていました。
しかし、この増税で、相続税が関係するケースが1.5倍から2倍に増えたとされています。さらに今後、世代交代が進めば相続も増えていきます。

この控除額では、東京23区内に土地と家屋を所有する人は、かなりの割合で課税対象になると言われています。
相続税の増税が重くのしかかり始めた今、終活として相続についても整理をしようと考える人が増えてきたことは、ごく自然な流れと言えるでしょう。

終活ブームはなぜ起こったか

それでは、そもそも終活ブームはなぜ起きたのでしょうか。
 

 

【自分の人生の終わらせ方を自分で決められる】

終活は、自分の人生の終わらせ方を自分で決めることにつながります。人生はいつ何が起きるか分からないものです。
突然病気やケガで入院し、そのまま家に帰ることもできずに人生の終焉を迎えることもあります。自分の人生なのに、好きな終わらせ方もできないのはさみしいことですよね。
そこで自分の人生を自分自身で整理し、人生の終わらせ方も自分で決めるために、終活をする人が増えているのです。
 

【自分が元気なうちに家族や友人に感謝を伝えられる】

終活をして自分がどんな人生を歩んできたか振り返ることで、自分がお世話になってきた人や、自分のために力になってくれた人が改めて見えてきます。
元気なうちに自分の大切な人について再確認し、改めて日ごろの感謝をきちんと伝えることで、想い残しや後悔を少しでも減らし、気持ちよく余生を過ごすことができます。
 

【自分を縛ってきた旧来の冠婚葬祭から子孫を解放できる】

日本では、時代の変化とともに冠婚葬祭のかたちも大きく様変わりし始めています。昔のように、葬儀や法事、お仏壇などに莫大なお金をかけることもなくなってきました。
お葬式も、親しい人だけでゆったりと最期を過ごす家族葬などが人気を集めています。しかし、今でも古式ゆかしい大規模な冠婚葬祭を続けている家も当然残っています。
自分自身が旧来のしきたりに縛られ、不自由な思いを強いられてきたという方が、そういった苦労を自身の代で終わりにし、次世代には新しい風を入れたいと考え、終活を積極的に行う方もいるようです。
 

【少子高齢化で遺産を相続する子どもに負担がかかりやすい】

少し前まではたくさん兄弟がいる家は珍しくはありませんでした。しかし今は少子高齢化が進み、両親に子どもが1人、という家庭も増えています。
その場合、子ども1人が両親の遺産をすべて相続しなければなりません。はじめは両親のうちどちらかと子どもで分割相続しても、いずれは次の相続がやってきます。
その場合、子どもが立て続けに相続しなければならず。相続税も莫大な金額になりかねません。こうした立て続く相続を【二次相続】と言います。
親が元気なうちに相続のことを全員で考え、少しでも子どもにかかる相続税の負担を軽くしてやりたい、という親心で終活が人気を呼んでいるのです。
 

【一人暮らしの高齢者が増加傾向にある】

核家族化が進み、高齢の両親とは一緒に住まないという若い世代も増えています。また離婚率や未婚率が高まり、1人で暮らし続ける高齢者も少なくありません。
1人暮らしの高齢者には、頼りになる人がいない、自分が亡くなった後相続などがどうなるのか相談できる人がいなくて不安という方もいます。
その場合、本当に天涯孤独という人でなければ、一緒に暮らしていないだけで相続人になる権利を持った親族がいる、という人がほとんどでしょう。
その場合、自分が一生懸命働いて貯めてきた財産をどうするか、多くの人が考えるのではないでしょうか。

そこでエンディングノートや終活ノートを活用して自分の持っている資産を計算し、自分の身辺整理を行うことに注目が集まるようになりました。
どのように今後生活していくべきか、亡くなった後財産はどのようにすべきかなどを考える人が増えたのです。

相続の生前対策にしておきたい5つのこと

それでは、具体的に相続の生前対策にはどのようなものがあるのでしょうか。相続の生前対策として、簡単にできること、今すぐ取り組めることをピックアップしてみました。

自分が所有する財産をすべて把握する

「自分の財産がどれくらいあるのかわかりますか?」と問われて、すぐに「預貯金額はいくらで有価証券の評価額はいくら、不動産はこれくらいの広さで評価額はいくら」と明確に答えられる人はどれくらいいるでしょうか。

ほとんどの人が、財産をなんとなく把握してはいるものの、その評価額や確かな価値などは分からないでしょう。

しかし、実際に相続が現実のものとなると、これらの評価額をすべて計算し、その上で数人の相続人で話し合い、誰が何をどれくらい相続するか決めなければなりません。

親しい親族であっても、自分の個人資産を事細かに話すことはあまりないことなので、亡くなった後に遺された親族が故人の資産をすべて調査することは大変な苦労なのです。

そのため、自分が元気なうちに所有している財産をすべて把握し、ある程度整理をしておくことは、遺された人々にとってとても意味のあることになります。

通帳が何通もあって、水道代はこれ、生命保険はこれ、ガス代はこれ……というように全部バラバラになっている、ということはありませんか?

通帳が何通もあり、自分でも把握できていない状態だったり、休眠通帳がたくさんあって引き出しが面倒だったりすると、後々どうしても手間がかかります。

通帳はできるだけ少ない数にまとめ、引き落としもまとめるなど、コンサルタントなどに相談して整理をしておきましょう。

また有価証券やNISA、iDeCoなども、どんな資産運用をしているのか、自分の担当は誰で、どこの証券会社や銀行で管理されているのかなど、一目瞭然にしておくと良いですね。

生命保険・傷病保険なども、いくつも入っているケースがあります。そんな時は、CMでもおなじみの保険のコンサルティング会社に相談して、分かりやすくまとめておきましょう。

その上で財産総額をざっと計算し、エンディングノート等に財産の目録・所在を分かりやすく記入しておくことで、遺族が困らずに済みます。

債務を整理しておく

財産はプラスのものだけではありません。未払金や借金といった債務も、マイナスの財産として受け継がれます。

相続放棄をせずに財産を受け継いだ人は、プラスの財産の中からマイナスの財産を清算しなければなりません。

このとき、いろいろな債務が何本もある状態だと、相続人が整理をする時に混乱しますし、手間が煩雑になり、整理することだけにお金がかかることもあります。

債務がある場合は、自分が元気なうちにできるだけ清算するようにしておきたいものです。未払金なども請求書を整理し、できるところから支払いを終えていきましょう。

多重債務になっている場合は、一度銀行などで行っている借り換え、おまとめといった方法を検討してみましょう。

多重債務を一本化するだけでも、返済しやすくなります。過払い金が発生している場合もあります。まずは債務を整理し、債務も返済しやすい状態にしてみませんか。

土地の測量・登記をしておく

相続のとき、もめやすいもののひとつが土地です。家が建っている土地、更地の宅地、道路に面している土地、面していない土地、農地、山林地など、土地の状態によって価値も税も大きく変化します。

たとえば、農地は簡単に売ることができません。また宅地などに変更することもさまざまな手続きを必要とします。

隣家や別の地主の土地との境界線が曖昧だったり、山林地だったりする場合も、広さがどれほどあるのかきちんと把握できていないケースがあります。

そのまま相続になってしまうと、誰がどの土地を相続するか、建っている空き家をどうするかなどで、大いにもめやすいのです。

さらに土地の登記は義務ではありませんが、登記をしておかなければ売買ができません。知らずに相続になってしまうと、相続人は何代にもわたってさかのぼり、登記をし直す必要があるケースもあります。

数次相続になるまで放置されていた場合、署名が必要な人数が数十人を超えるケースも珍しくありません。考えただけでもクラクラしますよね。

こうした煩雑さを防ぎ、すぐに売却したり活用したりできるように、測量をし直し、きちんと登記しなおしておくことで、遺された人々の手間が大いにはぶけます。

土地家屋調査士の名言に「杭を残して悔いを遺さず」というものがあります。土地の把握と管理が財産整理の第一歩です。

骨董品など、価値が分かりにくい物は行き先を明記

なかには骨董品や本格的なデジタル一眼レフカメラとレンズのセット、絵画作品やガレ・ドーム工房のガラス、盆栽など、非常に価値のある財産を所有している人もいます。

こうしたものは、評価額の付け方も難しく、趣味が合わないと相続もしにくいため、相続人も困る財産といえます。

同じ趣味のある親族や友人がいる場合は、形見分けとして譲って保存をお願いすることもひとつの手ですね。

また相続人に売却ルートや高く売れるお店、購入したお店など、売却したくなったときに困らないようなメモを残すこともおすすめです。

遺言書を作成し、それぞれの骨董品の行き先を細かく指定しておくと、大量のコレクションを前に戸惑う相続人の助けになるのではないでしょうか。

非課税となるお墓や仏壇などはあらかじめ準備しておく

実はお墓や仏壇、仏具などは、非課税対象として相続税に含まれることがありません。しかし、自分が亡くなった後で遺族が買いそろえる場合は、相続人がお金を負担することになります。

せっかく相続したお金で仏壇仏具、墓地や墓石をそろえたらお金が無くなってしまった……ということにならないよう、事前に非課税となるお墓や仏壇は準備しておくことも生前対策になります。

仏壇に関しては若い人々の住む家にもなじむようなものを、墓地に関しては遺された人々が訪れやすい場所を選ぶと良いでしょう。もちろん相談することが最善の方法ですね。

遺言書を作って相続人に伝えよう

先ほどもちらりと出てきましたが、もめない相続の準備としてポピュラーなもののひとつが、遺言書の作成です。

遺言書は3種類ある!

遺言書は3種類あります。【公正証書遺言】【秘密証書遺言】【自筆証書遺言】の3種類です。

【公正証書遺言】

公証役場で、公証人に作成してもらう遺言書です。公証人に作成してもらうため、公文書としての効力を持ちます。
遺言書には作成の書式などがありますが、公証人が作成するので間違いが起きにくく、しかも書いたあとに公証役場で保管してもらえます。
没後すぐに効力を発揮できる、唯一の公文書になる遺言書です。しかし、作成時に証人を2名立てなければなりません。
さらに公証役場で正式に作成してもらうため、お金もかかります。非常に有効、でも費用もかかる遺言書です。

【秘密証書遺言】

自分で遺言書は作成し、公証役場で公証人に封をしてもらう遺言書です。やはり証人を2名立てなければなりません。
誰にも内容は分かりませんが、開封する前に、相続人が家庭裁判所で検認を受ける必要があります。1か月ほどかかります。

【自筆証書遺言】

多くの人が活用する遺言書です。今は書き方がセットになった遺言書セットやエンディングノートも販売されています。
必ず自分の手書きで作成しなければなりません。パソコンは使えません。また印鑑や目録を作る必要もあり、書式もある程度決まっているため、少々面倒ではあります。
また公文書ではないため、やはり家庭裁判所の検認が必要です。しかし最も手軽に作れる遺言書です。

遺言書は書いたことを伝えて貸金庫などで保管を

遺言書は、公正証書遺言以外は自分で保管しなければなりません。万一書き換えなどの不正を行われないためにも、公正証書遺言を作成しない場合は、書いたことを家族に告げ、貸金庫などで厳重に保管しましょう。

家族の骨肉の争いを防ぐためには、遺言書を書く前からきちんと話し合い、遺言書があることをすべての相続人に伝えておくことが重要です。

生前対策の第一歩は身辺整理

近年は、物が捨てられない親の実家がゴミ屋敷と化してしまい、その整理に子ども達が追われて大変な目に遭うといったこともちょくちょく耳にします。
そんなことにならないよう、生前対策の第一歩は、身辺整理と心がけると良いのではないでしょうか。

身の回りのものの整理からスタートし、徐々に財産もきれいにまとめていくようにすれば、相続する人々の手間や苦労も省けますし、自分の思い描くエンディングを迎えることにつながります。

本記事の執筆者

税理士紹介エージェント 編集部

2012年から10年以上、税理士紹介エージェント を運営し、最適な税理士をご紹介する中で お客様からよく寄せられる疑問や税務に関するコツ、最新の税制改正情報など、幅広く税に関するお役立ち情報を提供しています。

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