お役立ちコラム

意外と知らない節税の注意点や税理士を選ぶポイントなど、税理士、税務に関する様々な豆知識をご紹介するお役立ちコラムです。

料金やサービス内容についても、お客様の代わりにより良い条件に交渉いたします

不動産の相続

公開日:2022/07/20 更新日:2022/07/22

農地を相続したらどうすればいい?手続き・税金・対処法などを解説

相続遺産に農地が含まれている場合、農地法による制限や税金の納付猶予制度、軽減措置などさまざまなことを考慮して手続きを行わなければなりません。

加えて、農地の跡継ぎ問題などさまざまな相続トラブルにもつながりやすいものです。

そこで今回は、農地の相続における手続き方法や税金にかかわる各種制度、相続対策やよくあるトラブルなどについて詳しく解説します。

農地の相続時に行う手続き

農地を相続する場合、以下の2つの手続きが必要となります。

  • 法務局での相続登記
  • 農業委員会への相続の届出

手続きは「法務局での相続登記」の後に「農業委員会への相続の届出」を行います。

農業委員会への相続の届出は、相続開始を知ってから10ヶ月以内と期限が定められています。相続する農地を管轄する市町村に設置された農業委員会へ、早めに届け出るようにしましょう。

法務局での相続登記

農地を相続した場合、他の不動産相続と同様に、相続する農地を管轄する法務局で不動産の名義人を変更する「所有権移転登記」が必要となります。

この際、遺言によって相続登記が発生する場合は、事前に農業委員会の許可を取らなければならない場合があるため、注意してください。

不動産を相続登記した場合と同様に、所有権移転登記には「固定資産税評価額×0.4%」の登録免許税がかかります。

また、登記申請をする際には、以下の書類が必要となりますので、事前に準備しておきましょう。

  • 登記申請書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本(現在戸籍)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 該当する農地を相続する相続人の住民票
  • 該当する農地の固定資産評価証明書
  • 遺産分割協議書または遺言書

農業委員会への相続の届出

農地を相続で取得する場合には、通常の不動産相続時には発生しない「農業委員会への届出」が必要です。

農業委員会は、市町村に設置されていて、農地法に基づく売買・貸借の許可など、農地に関する事務を執行する行政委員会です。

農地は、食料の安定供給に関わる存在であり、無秩序に売買され開発や宅地への転用などが行われないよう、農業委員会により監視・抑制されています。

そのため、相続や売買により所有者が変わった場合には、農業委員会に対しその内容を届け出ることが義務付けられています。

農地相続に関する農業委員会への届出は、相続税の申告期限と同じく「非相続人が死亡したことを知った時点から10ヶ月以内」となっています。

なお、相続税の申告期限については、この記事をご覧下さい。

届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合には「10万円以下の過料」が罰則として課せられるため、確実に届け出るようにしましょう。

農業委員会への届出には、所定の届出書以外にも相続登記済みの登記簿謄本や、相続の事実が確認できる書面の提出が必要となります。土地を相続する際に必要な書類について、詳しくは以下の記事をご確認ください。

【土地相続の申告に必要な書類】不動産相続申告には書類が多い!

農地の相続税評価額の計算方法

農地を相続した場合も相続税がかかる可能性があるため、相続税の有無や金額について事前に確認しておく必要があります。

相続税は、農地も含め遺産総額が3,000万円以上の場合に申告・納税の必要がありますので、相続税の納税が必要な場合は、ここでご紹介する計算方法で相続税額を確認しておきましょう。

なお、遺産総額が3,000万円以下の場合は、相続税の計算や税務署への申告・納税は不要です。

農地の区分と評価方法

農地の相続税計算は、該当する農地の区分によって異なります。

農地の区分と評価方法については、以下のとおりです。

農地区分評価方法
純農地農用地区域内の農地や、第1種農地、甲種農地に該当するもの倍率方式
中間農地第2種農地や、それに準ずる農地倍率方式
市街地周辺農地第3種農地や、それに準ずる農地市街地農地(宅地比準方式での評価額)✕ 80%
市街地農地転用許可を受けた農地、市街化区域内にある農地、転用許可を要しない農地として都道府県知事の許可を受けた農地原則:宅地比準方式※市街化区域内かつ倍率地域に位置する場合は、倍率方式でも可

第1種農地とは、農業公共投資(土地改良事業など)の対象となった、集団的に存在する生産力の高い農地のことを指します。

第2種農地とは、近い将来市街地として発展する環境にある農地や農業公共投資の対象となっていないような生産力の低い小団地の農地を指します。

第3種農地とは、鉄道の駅が300m以内にある等の市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地を指します。

参照元:国税庁ホームページ「No.4623 農地の評価

倍率方式での評価

倍率方式の評価は、純農地や中間農地、および市街化区域内かつ倍率地域に位置する市街地農地を評価する際に使用する評価方式です。

倍率方式での評価は「固定資産税評価額  ×  評価倍率(地域ごとに定められた倍率)」で計算します。

評価倍率については、国税庁ホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。

宅地比準方式での評価

宅地比準方式での評価は、市街地農地や市街地周辺農地の評価に使用される評価方法です。

宅地比準方式とは、その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額からその農地を宅地に転用する場合にかかる通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費に相当する金額を控除した金額に、その農地の地積を乗じて計算した金額により評価する方法を指します。(引用:国税庁ホームページ「No.4623 農地の評価」)

(宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額 ‐ 1平方メートル当たりの造成費相当額) × 地積

1平方メートルあたりの宅地造成費は、国税庁が年ごとに定めており、国税庁ホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。

なお、市街地周辺農地の場合、さらに80%をかけることになる点に留意しましょう。

減額評価の活用で相続税が軽減する

農地を相続する場合、減額評価を活用することで相続税の負担を軽減することが可能です。

減額できることを知らず、税金を多く納めてしまっている可能性もあるため、確認しておきましょう。

農地における相続税の減額要素として主なものに以下のようなものがあります。

  • 宅地造成費の控除
  • 市街地周辺農地の評価減
  • 生産緑地の評価減

宅地造成費の控除は、宅地比準方式での評価の際に適用できるものです。控除される金額は国税庁のホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。

市街地周辺農地の評価減は、市街地周辺農地(鉄道駅から500m以内)であった場合など、市街地周辺と認められた場合に、宅地比準方式で算出した評価額の80%に減額できるものです。

生産緑地の評価減は、当該土地が生産緑地に指定されていた場合に一定の条件で評価減が可能となる制度です。

評価減の条件や割合は国税庁ホームページ「No.4626 生産緑地の評価」に掲載されています。生産緑地に指定されているかは市町村に問い合わせれば確認できるので、事前に確認しておくようにしましょう。

その他にも「地積規模の大きな宅地の評価減」「貸し付けられている農地の評価減」など、相続税の軽減につながる条件があります。

その他の条件を詳しく知りたい方は税理士にご相談ください。

農地の相続税の納税猶予

農地を相続した場合、当該農地を引き継いだ相続人が引き続き農業をする場合に、相続税の納税が猶予される制度があります。

適用条件を満たしている場合は、当該農地で農業を継続している限り、農地にかかる部分の相続税は猶予され、相続人が死亡した場合などに猶予税額が免除となります。

納税猶予の対象になる農地 

納税猶予の特例適用対象になる農地は、特定市街化区域農地等に該当するものを除く農地、採草放牧地、準農地です。

また、当該農地は被相続人が農業に利用していたまたは特定貸付け若しくは認定都市農地貸付け等を行っていた農地であり、以下いずれかの要件を満たしている必要があります。

  • 相続税の申告期限までに遺産分割されていた農地であること
  • 贈与税納税猶予の対象となっていた農地であること
  • 相続の年に被相続人から生前一括贈与を受けた農地であること

市街化区域内にある農地は原則的には適用対象外ですが、都市営農農地の場合のみ適用可能です。

都市営農農地とは、3大都市圏の生産緑地内にある農地または採草放牧地のことを指します。

また生産緑地は、市街化区域にある農地で、都市の良好な環境の形成に役立ち、将来的には公共施設の敷地の候補ともなる農地のことです。

納税猶予を受けるための要件

納税猶予を受けるためには「被相続人」「相続人」がそれぞれ以下の要件をいずれか満たしている必要があります。

被相続人の要件

  • 死亡日まで農業を営んでいた
  • 生前に、相続人に農地を一括贈与した
  • 死亡日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人、または、農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、農業を営むのが困難な状況で営農困難時貸付を行っていて、税務署長に届出をした
  • 死亡日まで特定貸付または認定都市農地貸付け等を行っていた

相続人の要件

  • 相続税の申告期限までに農地を引き継ぎ、農業を継続している
  • 相続税の申告期限までに特定貸付または認定都市農地貸付け等を行っている
  • 被相続人から生前に農地を一括贈与され、贈与税の特例が適用されている

納税猶予を受けるために必要な手続き 

納税猶予を受けるためには、「相続税の申告手続き」と「納税猶予期間中の継続届出」の2つの手続きを行う必要があります。

相続税の申告手続きは、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税猶予に関する適格者証明書や担保関係書類などの書類を添付し、申告します。

適格者証明書は、農業委員会に申請して発行してもらう必要がありますが、発行までには数日かかる場合があるため、早めに申請しておくようにしましょう。

納税猶予期間の継続届出は、納税猶予期間中3年毎に、引き続き特例の適用を受ける旨と特例農地等に係る農業経営に関する事項等を記載した届出書(継続届出書)を提出する必要があります。

農地の相続税の納税猶予を利用する際のポイント

農地の相続税の納税猶予の特例は、引き続き農業を継続する場合は大きなメリットのあるものですが、利用の際に押さえておくべきポイントがいくつかあります。

農業をやめた際には納税額に利子が加算される

1つ目のポイントは、農業をやめた際には猶予を受けていた相続税の納税だけでなく、利子税も納める必要がある点です。

利子税とは、税金の延納もしくは延長などを受けた場合に、その期間に応じて課される附帯税のことです。

農地の相続税の納税猶予は、納税の免除ではなく一定要件を満たしている期間、納税が猶予されているだけです。

つまり、適用条件に当てはまらなくなれば特例を受けていた期間は延納を許可されていた期間と解釈され、同期間に該当する利子税の納付が必要となります。

納付する利子税額は、特例を受けた年の相続税の申告期限の翌日から納税猶予の期限までの期間に応じ、3.6%/年(市街化区域内にある農地の場合は6.6%/年)の利率で計算されます。

ただし、各年の特例基準割合が7.3%に満たない場合は、以下の計算式にて計算されます。

3.6% または 6.6%× 特例基準割合 ÷ 7.3%(0.1%未満切り捨て)

特例基準割合は、年によって異なり以下の通りです。

  • 平成12年1月1日以降平成25年12月31日まで

各年の前年の11月30日において日本銀行が定める基準割引率に4%を加算した割合

  • 平成26年1月1日以降

各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合

参照元:国税庁ホームページ「延滞税の割合

受け取り人は相続人に限る

農地に関する相続税の納税猶予は、相続人が農地を受け取った場合に限ります。

つまり、相続人以外の他人が受け取った場合には特例の適用はできません。

相続人二人以上での共同名義が可能

農地の相続を2人以上の相続人で共同名義とした場合でも、特例の適用が可能です。

ただし、相続人の中に相続後に継続的に農業を行わない人がいる場合、その人の名義分については納税猶予の対象外となるため、該当分の納税が必要となります。

20年間営農を継続した場合納税猶予額が免除される

相続後20年間農業を継続した場合、一定の条件下で納税猶予額は免除されます。

つまり、それ以降に農業をやめたとしても納税の必要性はなくなります。

ただし、納税が免除されるのは相続した土地が、三大都市圏の特定市以外で、生産緑地地区以外のみですので、注意しましょう。

農業をしない人が農地を相続する際の対処法

次に農業をしない人が農地を相続する場合、どうすればいいのか、対処法を解説します。

農地を売却する

1つ目の方法は農地を売却する方法です。

農地の売却には「農地のまま売却する」方法と「農地以外に用途変更して売却する」方法があります。

いずれの方法で売却するにしても、農地を所管している農業委員会への許可が必要です。

一般的に農地をそのまま売却するのは難易度が高く、売却価格も低くなる傾向にあるため

転用したいと考える方も多いですが、農用地区域や第1種農地、甲種農地となっている場合は、転用ができません。

農地のまま売却する必要がある場合は、農地を扱っている地元の不動産業者に依頼し、許可手続きなども合わせて依頼するとよいでしょう。

また農地の区分以外にも、農地の売買や貸借の許可を得るためには、農地面積が一定面積に達している必要があり、これを「下限面積」と呼びます。

近年では新規就農の促進のため、この下限面積を自治体の実情に応じた面積に緩和できるようになりました。売却を検討している場合は、当該土地の地域における下限面積を確認しておくようにしましょう。

他人に貸し出す

2つ目の方法は、相続した農地を農地のまま他人に貸し出す方法です。

農地の貸し出しには、「農業委員会へ申請し許可を得る方法」と「農業経営基盤強化促進法に基づき権利を設定する方法」の2つの方法があります。

「農業委員会へ申請し許可を得る方法」は、近隣の農業従事者などに農地を貸し出したり、農業委員会に借り主のあっせんを依頼し貸し出す方法です。貸し出しの際には、農業委員会に許可を得る必要があります。

農業委員会に借り主をあっせんしてもらう場合は、相続時の農業委員会への届出書にある「農業委員会によるあっせん等の希望の有無」という記入欄を活用します。

「農業経営基盤強化促進法に基づき権利を設定する方法」は、いわゆる農地バンクなどに登録して借り主を見つけてもらう方法です。

農地バンクは貸したい農地を集めて借りたい農家にまとめて貸す仕組みの通称のことで、貸し主が借り主を探す必要がない点が大きなメリットです。

また、農業経営期間強化促進法に基づいた農地の貸借は、貸借期間終了後に自動的に農地を返還してもらえる仕組みになっています。一定期間のみ安心して貸し出せるので、貸す側の権利が守られた制度と言えるでしょう。

相続を放棄する

3つ目の方法は相続放棄する方法です。

相続放棄すれば、農地を相続する必要がなくなります。

ただし、相続放棄は一部の資産のみ相続放棄することはできず、その他の相続も全て放棄することになる点には留意しましょう。

なお、相続放棄の申請は「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」が期限となっています。相続放棄をする場合は早めに申請するようにしましょう

農地を放置する

4つ目の方法は農地を最低限の管理で放置する方法です。

相続放棄や貸借、売却が難しい場合に選択せざるを得ない方法となるでしょう。

この際、近隣土地の住人や利用者に迷惑がかからないよう、雑草の除去や害虫対策など、最低限の管理は必要となります。

農地内に建物がある場合は、放置することで倒壊の危険性が高まったり、犯罪に利用される

可能性もあるため、取り壊しなどの対策も必要です。

また、農地を所有していれば放置していたとしても固定資産税の支払いが必要になります。

国に寄贈する

5つ目の方法は2023年4月から開始される「相続土地国庫帰属法」を利用して、国に寄贈する方法です。

「相続土地国庫帰属法」は、2021年4月に成立した法律で、相続等で土地を相続した人が法務大臣の承認を受けることで、土地の所有権を手放し、国庫に帰属させることができる制度です。

ただし、本制度を利用できる土地は以下の条件を全て満たした土地のみです。

  • 建物がない土地
  • 担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されていない土地
  • 通路その他の他人による使用が予定されている土地でないこと
  • 土壌汚染されていない土地
  • 境界が明らかではないなど所有権が不明確な土地でないこと
  • 崖があるなど通常の管理に大きな費用や労力が必要となる土地でないこと
  • 工作物や樹木・車両がある土地でないこと
  • 除去が必要なものが地下にある土地でないこと
  • 争訟をしなければ使用・管理ができない土地でないこと
  • 上記以外に管理・処分に大きな費用や労力がかからない土地であること

農地相続でよくある質問、よくあるトラブル

最後に、農地の相続に関してよくある質問およびトラブルを紹介します。

サラリーマンとの兼業で相続した農地を使用できていないが課税されるのか?

農地を相続し相続税の猶予を受けているのであれば、農地を農業に使用していることが条件となっているため、使用していなければ課税の対象となります。

ただし、この場合農業に利用している基準としては、工作や農業そのものを必ずしも行っていなければならないわけではなく、農地の保全管理(定期的な草刈りや見回り)などを行っていれば、問題ないと考えられます。

仮に保全管理も難しい状況にあるのであれば、納税猶予が解除され相続税及び猶予期間の利子税を納付する必要が出てくるので、注意しましょう。

都心の農地(生産緑地)を相続したがどう対処すれば良いか?

生産緑地を相続した場合、相続税の負担が最も軽いのは、生産緑地を相続し農業を継続することです。

生産緑地として所有・管理を継続すれば、固定資産税は農地課税となり、相続税は納税猶予を利用できるため、大幅に税負担を軽減する優遇措置が受けられます。

長期間にわたって農業を継続できるのであれば、税優遇が大きいこの方法がおすすめです。

農業の継続が難しい場合は、生産緑地を売却するか、生産緑地を解除して開発・売買を行うことになります。

生産緑地を売却する際は、市町村へ買取申し出を行う必要があります。申し出から3ヶ月経過しても買取先が見つからない場合、生産緑地の制限が解除されます。

ただし、生産緑地が解除された場合は、固定資産税は宅地並み課税となり、相続税の納税猶予も受けられないため、税負担が大きくなる点には留意してください。

夫が相続した農地を子供に相続させたくない。事前に離婚して解決できるのか?

離婚した場合、妻は相続人ではなくなりますが、実子は親権の有無に拘わらず、相続人となるため、離婚は解決とはなりません。

そのため、相続したくない場合は相続放棄をすることになりますが、農地だけを相続放棄する事はできず、その他の財産も全て放棄の対象となる点には注意しましょう。

相続する資産のうち農地だけ相続放棄できるのか?

相続放棄を農地だけといった相続資産の一部に指定して行うことはできません。

元々、相続放棄という制度は被相続人が莫大な借金を背負っていた場合などに、相続人がその責を逃れることを趣旨としており、相続人でなくなることを指します。

そのため、農地を含む一切の相続権利を放棄することになる点に留意しましょう。

使っていない農地を相続したので、特に申告せずに整地して駐車場と物置を建てました

農地を別の用途に転用する場合は、農業委員会に対し農地転用に関する届出・許可が必要です。

届出・許可なく転用すると農地法違反となり、工事の中止や原状回復命令、3年以下の懲役や300万円以下(法人に対しては1億円以下)の罰金が科せられることもあります。

農業の継続が難しく転用を検討している場合は早めに農業委員会に相談するようにしましょう。

農地を含めた遺産分割がうまくいきません

相続財産に不動産が含まれている場合、相続に伴う登記申請を行う必要があります。

相続人が複数いる場合、法定相続割合以外で登記をする際は遺産分割協議書(※)に相続人全員が押印したものが必要になりますが、この遺産分割でトラブルになることがあります。

特に相続財産に農地が含まれる場合、遺産分割協議がまとまらないことが少なくありません。

例えば、農地は固定資産評価額が一般宅地に比べ低いため、相続財産を金額的に平等に相続するとすると、農地を相続する人は農地に加えて、他の土地も合わせて相続することになるケースが多いです。これに他の相続人が不満を覚えることもあります。

また、地方の農地で相続人が他の都道府県に拠点があることで、誰も農地を相続したがらず、放置されるというケースも少なくありません。

(※)遺産分割協議書の詳細については、以下の記事をご確認ください。

遺産分割トラブル回避のために、遺産分割協議書や遺言書を作成しよう

農地相続は専門家に相談しよう

農地相続の手続きは一般的な宅地などの不動産に比べ、農地法による制限や相続税の納税猶予、評価減などさまざまな要素があり、複雑です。

制度を理解していない状況で相続手続きをして、本来払う必要のない税金を払ってしまうことにもなりかねません。

農地の相続を適切におこなうためには専門家への相談がおすすめです。

すでに申告された場合でも5年以内であれば還付請求が可能ですので、もう一度見直してみてはいかがでしょうか。

税理士紹介エージェントでは、生前贈与も含めた相続関連に詳しいプロをご紹介しています。初回の相談なら無料で応じている事務所も多いため、ぜひご利用ください。

【生前贈与】相談できる5種のプロと、利用できる無料相談

また、農地の相続にあたって農業法人を設立するのも有効な方法です。

農業を法人として行うことで、社会的信用を獲得できたり、節税対策が行えたりするなど、さまざまなメリットもあります。

ただし、農業法人の設立に関する手続きは非常に煩雑ですし、相続税の申告処理や書類作成は税理士しか対応できないため、税理士への相談が必須です。

そういった意味で農地の相続が発生した方は元より、将来、農地の相続の可能性がある方も、できるだけ早めに税理士に相談することをおすすめします。

本記事の執筆者

税理士紹介エージェント 編集部

2012年から10年以上、税理士紹介エージェント を運営し、最適な税理士をご紹介する中で お客様からよく寄せられる疑問や税務に関するコツ、最新の税制改正情報など、幅広く税に関するお役立ち情報を提供しています。

2012年から10年以上、税理士紹介エージェント を運営し、最適な税理士をご紹介する中で お客様からよく寄せられる疑問や税務に関するコツ、最新の税制改正情報など、幅広く税に関するお役立ち情報を提供しています。

上に戻る

無料のご紹介窓口 / 最短即日からのご紹介